宮崎公立大学 森部陽一郎 教授【スムーズな伝達と情報デザインの重要性】

宮崎公立大学 森部陽一郎 教授に独自インタビュー

現代社会において、情報はあらゆる形態で私たちの日常生活に溶け込み、それに伴う品質の管理がより複雑になっています。

また、情報がユーザーへ効果的に伝達されるかは、ただ単に技術的な問題ではなく、利用者の満足度と直接的に関係しています。

この記事では、宮崎公立大学の森部陽一郎教授に品質管理と情報デザインの関係性、サービスの利用品質をどのように高めているのかを独自インタビューさせていただきました。

森部陽一郎教授の紹介

宮崎公立大学 人文学部 国際文化学科
森部陽一郎(もりべ よういちろう)教授

近畿大学大学院産業技術研究科経営工学専攻博士後期課程を修了。博士(工学)。

受賞歴は、日本生産管理学会功労賞2014年9月、厚生労働省労働基準局長表彰受賞2019年11月、厚生労働大臣感謝状贈呈2021年7月など。

専門は、情報デザイン・品質管理・情報工学。

主な研究テーマ:情報伝達における利用品質に関する研究

近著は『現代の品質管理』(泉文堂、1999年)

論文「災害対応ピクトグラムにおける調査研究 〜岡山市消防局における調査を中心に〜」『宮崎公立大学人文学部紀要』第31巻第1号

「COVID-19感染防止啓発ピクトグラムに関する一考察」『宮崎公立大学人文学部紀要』第29巻第1号

「LMSにおけるユーザビリティ評価」『宮崎公立大学人文学部紀要』第28巻第1号

利用品質の基本的な定義

TLG GROUP編集部:早速ですが、利用品質の基本的な定義や目的について質問させていただきます。そもそも利用品質とは何を意味しており、なぜ重要視されているのでしょうか。

森部教授:私が行っているのは情報デザインという領域になります。

前提として、品質管理というのは元々物理的な商品やサービスの質を向上させるために使われ始めました。

情報デザインは、伝えたい情報をどのようにデザインすれば相手に効果的に伝わるかを考える分野です。情報の形態が適切であればあるほど、質が向上し、伝えたい内容を的確に伝えることが可能になります。

TLG GROUP編集部:なるほど、それで情報デザインの質が高まるということですか。

森部教授:はい、情報デザインの質が高まると、それは直接的に利用者の満足度を向上させることにつながります。利用品質が高まると、顧客満足度も高まるわけです。つまり、情報デザインは利用者にとって非常に価値のあるものといえるでしょう。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。次の質問ですが、利用品質と品質管理はどのように関係していますか?

森部教授:先ほども申し上げた通り、品質管理とは製品やサービスの質を保証し、向上させるための一連のプロセスことです。

具体的には、製品が設計どおりに作られているか、規定の基準を満たしているかを確認する作業が含まれており、これは主に製造者や提供者の視点から行われます。

TLG GROUP編集部:つまり、製造者や提供者の視点から品質を見ているということですね。

森部教授:その通りです。しかし、利用品質という概念は少し異なります。利用品質は、利用者の視点から製品やサービスの質を評価するものです。

具体的には、利用者がその製品やサービスをどれだけ満足して使っているか、どれだけ役立っているかに焦点を当てます。例えば、使いやすさや信頼性、アフターサービスの質などが評価基準になるでしょう。

TLG GROUP編集部:ということは、利用品質は使う側の視点で品質を評価するということで間違いないですか?

森部教授:そうです。利用品質の考え方は、従来の品質管理が製造者や提供者の視点を重視していたのに対し、顧客や利用者の満足度を重視します。

これは、製品やサービスの質を最終的に評価するのはユーザーであるという考え方に基づいています。そのため、企業は製品の開発や改善において、利用者のフィードバックを重視し、ニーズに応えることが求められます。

TLG GROUP編集部:大変勉強になりました。つまり、利用品質は品質管理の延長線上にあり、より顧客重視のアプローチとなっているのですね。

森部教授:その通りです。品質管理と利用品質は相互に関連しており、どちらも最終的には製品やサービスの質を向上させることを目的としています。しかし、その視点やアプローチが異なるのです。

品質管理は製造プロセスや作る側の視点を、利用品質は顧客満足度や利用者体験を重視します。このように、両者を組み合わせることで、より高品質な製品やサービスを提供することができるのです。

情報伝達における利用品質の役割

TLG GROUP編集部:はい、ありがとうございます。次の質問に移らせていただきます。先生の主な研究テーマである情報伝達における利用品質に関する研究について、以下の2点についてお話を伺いたいと思います。

まず1つ目、研究概要についてお聞かせいただけますか?

森部教授:先ほども少し触れましたが、私の研究は情報デザインという分野に関するものです。これは品質管理とはかなり異なる領域になります。

情報デザインは非常に広範で新しい学問分野です。実は、私も元々は品質管理の研究者で、大学院では品質管理を専攻していました。

TLG GROUP編集部:それは興味深いですね。品質管理から情報デザインへの移行について、もう少し詳しく教えていただけますか?

森部教授:はい。大学院で品質管理を研究していた頃、ちょうどインターネットが商業化され始め、一般的に広がっていきました。

その時期にインターネットを通じて情報の品質を保証する方法について興味を持つようになったのを今でも覚えています。情報の質をどうやって向上させるかに関心が移り、その結果、情報伝達を受ける側の視点に焦点を当てるようになったのです。

これが私の現在の研究の中心となり、結果的に情報デザインという領域に至りました。

TLG GROUP編集部:つまり、情報デザインとは具体的にどのようなものなのでしょうか?

森部教授:簡単に言うと、情報デザインはどのような情報を提供すれば受け手が理解しやすいか、どのような情報が誤解を招くかを研究する分野です。

例えば、情報がうまく伝わらなかったために誤った操作をしてしまう、情報が不十分でどの操作をすればよいかわからない、といった問題に対応します。このような観点から、情報の使いやすさや正確さを向上させることを目指しています。

TLG GROUP編集部:それは非常に重要な研究ですね。具体的にはどのような研究をされているのですか?

森部教授:現在は、特にインタフェースデザインに焦点を当てています。情報が正確に伝わらないと、ユーザーが誤った操作をしてしまったり、操作方法が分からなくなってしまったりします。

そのため、インタフェースの設計において、情報がどのように伝達されるかが重要です。

具体的には、ユーザーが直感的に理解できるような情報提供方法や、誤解を招かないようなデザインを研究しています。

TLG GROUP編集部:なるほど。情報の伝達方法やデザインが、ユーザーの行動にどれほど影響を与えるかを研究されているのですね。

森部教授:その通りです。情報の伝達がうまくいかないと、ユーザーは誤った操作をしてしまったり、必要な情報を見逃してしまったりします。

したがって、情報デザインの目的はユーザーが必要な情報を正確に、迅速に理解できるようにすることです。これにより、ユーザーの満足度や利便性を向上させることができます。

TLG GROUP編集部:非常に興味深いお話をありがとうございます。情報デザインの重要性がよく分かりました。次に2点目の質問ですが、情報伝達における利用品質の役割について具体的にお聞かせいただけますか?

特に、理解と需要性の向上、顧客満足度の向上、そして意思決定の支援について詳しく解説していただけると幸いです。

森部教授:はい、情報伝達は非常に重要な役割を果たしています。世の中のほとんどのものは、情報のやり取りによって動いていると考えられます。

例えば、人がどこかに行こうと思ったとき、その場所で何ができるのか、どうすればそれを達成できるのか、といった情報が正確に伝わることで適切な判断ができるのです。

TLG GROUP編集部:私にも経験がありそうです。具体的な例を挙げていただけますか?

森部教授:もちろんです。例えば、トイレのピクトグラムについて考えてみましょう。トイレには男性用と女性用を示す記号がありますよね。

あのピクトグラムを見て、利用者はどちらのトイレを使うべきかを判断しています。この

判断が正確に行われるためには、ピクトグラムのデザインが明確で、情報が正しく伝わらなければなりません。

TLG GROUP編集部: 確かに、もしそのピクトグラムが分かりにくかったら、利用者は困ってしまいますね。

森部教授:情報が正しく伝わることで、利用者は適切な行動を取ることができ、これが質の高さに直結します。情報が分かりやすく正確であることが、利用者の理解を深め、需要性を高めることにつながるのです。

TLG GROUP編集部:情報の質が高いと、利用者の満足度も向上するのですね。

森部教授: そうです。情報が正確で分かりやすいと、利用者は必要な情報を迅速に得ることができ、ストレスなく行動を起こせます。

新技術の活用が利用品質向上にもたらす影響

TLG GROUP編集部:はい、ありがとうございます。最後の質問に移ります。先生は情報デザインの分野もご専門とされていますが、5G、AI、IoTなど新しい技術の導入やデータ分析の活用が利用品質の向上にどのように寄与するとお考えでしょうか?

利用品質の未来についてご考察をお聞かせください。

森部教授:これは非常に重要な質問ですね。まず、情報デザインの領域がなぜ生まれたかという背景についてお話しします。

インターネットが商業化され、一般の人々が日常的に使うようになると、大量の情報が私たちの手元に届くようになりました。それ以前は、我々が処理する情報量はそれほど多くなかったのですが、現在では圧倒的な情報量に直面しています。

TLG GROUP編集部:確かに、現代では情報が溢れていますね。

森部教授:このような情報量の中で、私たちが必要な情報を正確に、迅速に見つけ出すために、Googleのようなサーチエンジンが重要な役割を果たしています。

サーチエンジンは情報を集めるだけでなく、絞り込む機能を持っています。これは、情報デザインの基本的な考え方だと言えるでしょう。

TLG GROUP編集部:なるほど。では、5GやAI、IoTの技術はどのように利用品質の向上に貢献しているのでしょうか。

森部教授:5GやAI、IoTなどの新しい技術は、さらに膨大な情報を私たちにもたらします。5Gは超高速通信を可能にし、IoTはさまざまなデバイスがインターネットに接続されることで、さらに多くのデータが生成されるのです。

AIはこれらのデータを分析し、利用者にとって有益な情報を提供する役割を担います。しかし、情報量が増えるにつれて、必要な情報が的確に届かないと、私たちは情報の海に溺れてしまうかもしれません。

TLG GROUP編集部: 情報が多すぎると、逆に必要な情報を見つけにくくなるということですね。

森部教授:そうです。そのため、新しい技術の導入に伴い情報をいかに整理し、分かりやすい形で提供するかが重要になります。これが情報デザインの役割であり、今後さらに注目されるポイントです。

具体的には、情報の表示方法やインタフェースの設計が重要であり、ユーザーがすぐに理解できるような情報提供が求められます。

TLG GROUP編集部:つまり、新しい技術の進展に伴い、情報デザインの重要性も増していくということですね。

森部教授:その通りです。未来においては、情報の質を向上させるための技術がますます発展し、それによって利用品質も向上するでしょう。

これにより、ユーザーは必要な情報を迅速に、正確に取得でき、意思決定の質も向上します。最終的には、これが顧客満足度の向上にもつながると考えています。

まとめ

TLG GROUP編集部:本日はお時間をいただき、ありがとうございました。森部教授にインタビューして、下記のことが分かりました。

独自インタビューで分かったこと
  • 情報デザインは、情報を理解しやすく誤解なく提供することに焦点を当て、顧客満足度と利便性を向上させている。
  • 利用品質はユーザーの視点から製品の質を評価し、品質管理は製造者の視点から質を保証している。
  • 新技術の導入、特に5G、AI、IoTは情報量を増やし、迅速かつ正確な情報提供によって意思決定と顧客満足度を向上させている。
  • 情報デザインはユーザーの直感的理解を促進し、誤操作や情報漏れを防ぐ。
  • 技術の進展に伴い、情報デザインの重要性は増しており、情報量増加に対してユーザーに有益な情報提供が可能になる。

利用品質とは、ユーザー視点での製品やサービスの質を評価する概念であり、情報デザインにおいて重要です。情報が正確で分かりやすいと、利用者の満足度が高まります。

また、新技術の導入、特に5G・AI・IoTは情報量の増加をもたらし、情報デザインの重要性をさらに高めていくでしょう。これらの技術は情報を適切に整理し提供することで、ユーザーの意思決定を支援し、顧客満足度を向上させることが期待されています。

取材・文:TLG GROUP編集部
記事公開日:2024年6月9日