倉敷芸術科学大学 楢村友隆 准教授 【幅広い世代のニーズに合わせた痛みを感じにくい脱毛器】

倉敷芸術科学大学 楢村友隆 准教授に独自インタビュー

近年、脱毛の普及率は年々上昇しています。脱毛がより手軽に受けられるようなプランや価格帯になったことで、脱毛に興味を持っている方も多いでしょう。

しかし、様々な種類がある脱毛の中で何を選べば良いのか、そもそも脱毛とはどういった仕組みなのか気になっている方もいるはずです。

今回は、倉敷芸術科学大学の楢村准教授に、脱毛器「クリアスキンネオ」の概要、今後の脱毛業界の展望について独自インタビューをさせていただきました。

楢村友隆准教授の紹介
倉敷芸術科学大学 楢村友隆 准教授

倉敷芸術科学大学 生命科学科
楢村友隆(ならむら ともたか)准教授

日本メディカル工学専門学校臨床工学科を卒業後、九州保健福祉大学大学院保健科学研究科にて博士号(保健科学)を取得。

臨床工学技士免許を取得後、総合病院、人工透析専門医院などで血液浄化治療、心臓カテーテル治療、集中治療業務等を専門として行う。千葉科学大学危機管理学部助教、純真学園大学保健医療学部講師、東亜大学医療学部特任准教授を経て、平成31年より現職。

専門分野は血液浄化学・美容医工学。現在は医療機器・美容機器の専門家として、新たな美容機器の開発や研究を重ねている。

近著(共著・編著を含む)として、「よくわかる脱毛“後悔しないサロン選び”」(2023:監修)、「透析液水質管理の基礎知識」(2021;単著)、「血液浄化機器2020」(2020;共著)、「透析療法最前線」(2018;共著)など。

大学教員になったきっかけ・経緯

TLG GROUP編集部楢村様は病院の臨床現場を経て大学教員になられたと伺いましたが、大学へ研究の場を移したきっかけは何だったのでしょうか。

楢村准教授:私は臨床工学技士という医療職の国家資格を持っていて、人工臓器の操作や保守管理を行っていました。具体的には、心臓が悪くなった人への心臓カテーテル治療や腎臓が悪くなった人への人工透析治療、人工呼吸器の操作などを担当していました。

病院に勤務しているころは、臨床工学技士として臨床業務に従事する傍ら、研究も行っていました。しかし、次第に深く研究したいという思いに加えて、多くの人材を自分の現場での経験を伝えつつ育てたいという気持ちが強くなってきました。

TLG GROUP 編集部病院の実習等で来た生徒には限られた時間しか指導ができないというデメリットはありますね。

楢村准教授:そうですね。病院では管理職をしていましたが、自分の病院で教えられる技士や学生は本当に少数でした。病院実務以外でも最大で年間40講演ほどを全国で行っていましたが、伝えられることは限られます。

TLG GROUP 編集部:先生の「もっと多くの生徒に技術を伝えたい」という熱意から、大学教員への道は開かれたのですね。

楢村准教授:はい。それが大学の教員に興味を持ったきっかけの1つですね。

また、研究を進めるために働きながら大学院にも通っていたのですが、博士の学位も取得できたため、大学への転職を決断しました。

TLG GROUP 編集部:大学教員になられてからはどのような研究をされていたのでしょうか。

楢村准教授:転職してすぐは臨床工学技士業務に関連する人工臓器治療の研究をしていました。

そんな中、ちょっとしたきっかけで美容外科の先生からお声掛けいただき、美容外科クリニックに伺う機会がありました。

美容外科では様々な種類の美容機器が大量に使用されていることを知りました。また、これらの美容機器の大半は、我々が専門として扱っている医療機器と原理が同じであることに気が付きました。その時から美容医療にも興味を持ち、美容の研究も始めたのです。

TLG GROUP 編集部:美容外科と臨床工学はかけ離れている印象がありましたが、類似点があるのは驚きました。楢村様はクリアスキンネオの学術顧問をなされていると伺ったのですが、先生自身も脱毛を経験されたことがあるのでしょうか。

楢村准教授私自身、大学教員になって数年経った頃、濃い髭が鬱陶しくなり脱毛しようと思い立ったことがありました。

日頃から通っている皮膚科で脱毛を受けることになったのですが、想像以上に痛かったですね。

TLG GROUP 編集部:脱毛と言えば、よく「ゴムを弾いたような痛み」と表現されますが、実際そういった痛みは感じたのですか。

楢村准教授いえいえ、涙が出るくらい痛かったです。

痛みを軽減する麻酔クリームも処方してもらったので塗ってみましたが、あまり効果は感じられませんでしたね。また、最も低いレベルまで出力を下げて施術してもらいましたが、それでも我慢できませんでした。都度払いにしていたこともあり、すぐに脱毛に行くのを止めました。

TLG GROUP 編集部:途中で中止してしまうほど痛みが強かったのですね。他の病院に変更後、痛みが軽減されるということはありましたか。

楢村准教授いくつかの病院で施術を受けましたが、結局痛くてどこも長続きしませんでした。

「髭が濃いので、涙が出るほどの痛みを我慢しないと脱毛はできない」と半ば諦めていましたが、そんな時にサロンでも脱毛をやっているということを知り、行ってみることにしたのです。

TLG GROUP 編集部:病院とサロンでは脱毛施術の方法が違うのでしょうか。

楢村准教授そうですね、病院はレーザー脱毛を取り入れているのに対して、サロンは光脱毛を取り入れています。

TLG GROUP 編集部:つまり、医療脱毛とサロン脱毛の違いというのはレーザーを使うか、光を使うかで定義されるのでしょうか。

楢村准教授:それは違います。医療脱毛とサロン脱毛の違いは、毛球部を破壊するかしないかの違いです。

TLG GROUP 編集部:そうなのですね。病院での施術とサロンでの施術に痛みの点で違いはありましたか。

楢村准教授サロン脱毛の場合、痛みはありますがレーザー脱毛ほどは感じませんでした。

光脱毛は脱毛完了までに回数がかかるというデメリットはありますが、少しでも痛くない方がいいと思ったので、光脱毛のサロンを利用しました。

また、光の生体物性工学は私の専門でもあり、非常に興味が湧きました。そこで、国内で販売されている脱毛器をほぼ全種類調べ、Dr.Visea社の光脱毛器の特性に特に興味を惹かれました。

TLG GROUP 編集部:度々、医療脱毛とサロン脱毛のどちらが良いかという議論がありますが、どちらを選ぶかは個人の「痛みに耐えられる度合い」で選ぶのが良いですね。

いまだ解明されていない脱毛業界の謎とは

TLG GROUP 編集部:楢村様は「クリアスキンネオ」を提供しているDr.Visea社と共同研究をしていると伺いましたが、具体的にはどのようなことを研究されているのでしょうか。

楢村准教授効果的かつ安全に、痛みの少ない脱毛が可能となる脱毛器についての研究を行っています。「クリアスキンネオ」と「クリアスキンLED」は、これらの研究成果が詰まった優れた光脱毛機であると自負しています。

あと、脱毛の機序の解明にも取り組んでいます。

実は、「なぜ永久脱毛ができるのか」という原理は未だに解明されていないのです。

TLG GROUP 編集部:インターネットや脱毛サロンのホームページ、医療系のサイトなどでは「毛乳頭やバルジ領域を破壊する」と書かれているのをよく目にしますが、それは間違いなのでしょうか。

楢村准教授その情報の一部は間違いです。もし仮にバルジ領域を破壊したら、皮膚の表面にある表皮は作れなくなってしまいます。一方で、最近よく使用されている蓄熱式脱毛器で脱毛ができているということは、バルジ領域を破壊しなくても脱毛が可能であるということが経験上示されています。

TLG GROUP 編集部:そうだったのですね。知識が薄いからこそ、私を含め、情報を鵜呑みにしてしまっていた利用者は多いと思います。

脱毛が可能な原理は未だによく分かっていないということでしたが、それを解明するためにどのような研究をされているのでしょうか。

楢村准教授現在は、バルジ領域に働くタンパク質の分析や、解剖学的に皮膚がどのような状態になっているのかを観察するといった研究をしています。

TLG GROUP 編集部:先ほどレーザー脱毛を受けられていたと仰っていましたが、レーザー脱毛と光脱毛の決定的な違いというのは、痛みと完了期間の点以外にあるのでしょうか。

楢村准教授:私は研究用として光脱毛器もレーザー脱毛器も両方持っていますが、「レーザーは光に比べてエネルギーが抜群に強い傍ら、皮膚へのダメージも強い」ということです。

レーザー脱毛器は、光脱毛器と比べると数十倍のエネルギーになります。

ですから、「エネルギーの強力さ」という面で言うと、光は絶対にレーザーに勝つことはできません。

TLG GROUP 編集部:そうだったのですね。逆に光脱毛のメリットはありますか。

楢村准教授はい。そもそも一般的に脱毛に使われているレーザーには、アレキサンドライト、ダイオード、ヤグの3種類があります。

レーザーはレーザーポインターと同様に、直線的に飛ぶ性質があることに加え、波長はレーザーの種類によって1つに決まっています。

TLG GROUP 編集部:波長が1つだと、どのようなことが起きるのでしょうか。

楢村准教授それぞれの波長には特徴があり、例えば、レーザー光が皮膚の中に入り込む距離はレーザーの種類によっておおよそ決まっています。つまり、波長が1つということは、そのレーザー光がどの程度の深さまで到達するかが決まっているということです。

一方、光脱毛の場合は電球と同じで、光は拡散しますが様々な波長の光が出ているのです。

様々な波長の光が出ているということは、様々な深さに光が届くということでもあります。1ヶ所に届く光のエネルギーはレーザーと比べると弱いのですが、様々な深さに光が届くのは光脱毛ならではのメリットです。

脱毛の危険性・今後の課題

TLG GROUP 編集部:それぞれの特徴を踏まえると、やはり光脱毛はサロン向けの脱毛方法なのですね。

脱毛で事故が起きたというニュースもよく見るので、脱毛は病院で受けたいという方も多くいると思います。

楢村准教授レーザー脱毛はかなり出力が強いので、病院でも医療事故と呼べるぐらいのレベルの事故も起こっているのが実情です。

そのため、レーザー脱毛器は光脱毛器以上に扱う際に注意が必要だと考えています。

TLG GROUP 編集部:脱毛というと、ニードル脱毛、クリームでの脱毛など色々ありますが、永久脱毛の効果が高いのはどの方法なのでしょうか。

楢村准教授まず、1番効果が薄いのは除毛クリームですね。これは表面に出ている毛を溶かしているだけなので、永久脱毛はできません。

一方、レーザー脱毛は毛球部をしっかりと破壊するので、永久脱毛が可能です。

TLG GROUP 編集部:毛根を破壊することで脱毛する、ニードル脱毛はどうでしょうか。

楢村准教授ニードル脱毛は1~2回で生えている毛の脱毛が完了するので、非常に便利な脱毛方法です。一方、今生えてない毛もあるため、脱毛完了期間は他の脱毛方法とあまり変わりません。

また、ニードル脱毛における最大の欠点としては、数ある脱毛方法の中でも抜群に痛いということが挙げられます。

TLG GROUP 編集部:レーザー脱毛よりも痛いのでしょうか。

楢村准教授そうですね。かなりの痛みが我慢できる人でないと、ニードル脱毛はできません。

500円玉ほどの面積をニードル脱毛するのにかかる時間は約1時間です。そのため、全身脱毛には向いていませんし、脇やVIO、髭の施術だけでも1時間以上かかることは覚悟して施術を受けなくてはなりません。

また、施術者の集中力はそれほど長く続きませんので、1回の施術は30分から1時間ほどが限界のようです。

このように、面積当たりの脱毛時間は長いというデメリットはありますが、現在目に見えている毛を1、2回で確実に永久脱毛できるという点はニードル脱毛の大きなメリットでしょう。

TLG GROUP 編集部:1度抜いた場所からは永久的に生えてこないのは確かに魅力的です。ちなみに、光脱毛でも永久脱毛は可能なのでしょうか。

楢村准教授はい。よく医療脱毛のホームページではサロンの光脱毛は永久脱毛ではないと書かれていますが、それは大きな間違いです。

そもそも永久脱毛というのは、“最終脱毛後1か月後の毛の再生率が20%以下であること”と定義されています。経験上、光脱毛でも適切な装置で適切に施術すれば永久脱毛は可能です。

TLG GROUP 編集部:なるほど。永久脱毛と聞くと100%毛が生えないと勘違いしている人は多いと思います。

サロンでも光脱毛器の出力を上げていくと、毛球部を破壊できるのでしょうか。

楢村准教授はい。現状、かなりのレベルまで出力が上げられる装置も販売されています。そういった光脱毛器で照射すると医療脱毛に近い効果が得られるのは事実です。

しかし、サロンの脱毛器で医療従事者ではない方が毛球部を破壊する行為を行った場合は法律に触れることになるので注意が必要です。

TLG GROUP 編集部:医療脱毛とサロン脱毛の線引きは明確に定められているのですね。

永久脱毛が完了した後でも脱毛を続けることで、数年後に毛が再び生えてくることを防げるのでしょうか

楢村准教授そうですね。脱毛に通い続ければ殆ど毛は生えてこないでしょう。やがては毛穴も無くなります。

一方で、個人差はあるものの、しぶとい毛が生える箇所は何回脱毛をしても生えてくることがあります。ただし、そういった部分も脱毛に通い続ければほぼ目立たなくなるので、気になる方はその都度その部位だけ照射すれば良いと思います。

TLG GROUP 編集部:ありがとうございます。レーザー脱毛による医療事故のお話がありましたが、光脱毛における安全性は保証されているのでしょうか。

楢村准教授光もレーザーより安全というだけなので、完全に安全性が保証されているわけではありません。光脱毛器を当てると新聞紙は即座に燃えるくらいのエネルギーがあるので、取り扱いには注意が必要です。

TLG GROUP 編集部:それだけの光エネルギーが体に入っているということは、扱い方を少しでも間違えると大きな事故に繋がってしまうのですね。

楢村准教授レーザーと光に共通しているのは「黒いものに当たると熱を発する」という点で、人間の体でいうと目の黒目がそれに当たります。ゴーグルをつけて施術するのは、そういった危険を少しでも避けるためなのです。

その他にも、脱毛器を扱う際にはやけどに注意しなければなりません。去年の6月にはあるサロンで光脱毛器を使った施術を受けていた方が大火傷をするという事故がありました。

この事故は、組み立て時に脱毛器の部品を一つ入れ忘れたということが原因で起きたものですが、出力を入れ間違えたり、操作を誤ったりしても火傷は生じます。こうした現場で起こるミスは大きな問題になっていますし、同じような事故がクリニックで起こることもあります。

ただし、クリニックの場合は、医師による迅速な処置や薬の処方が可能なため、そこまで大きなクレームに繋がることは少ないようです。

TLG GROUP 編集部:ちなみに、病院で実際に施術をするのは医師の先生なのでしょうか。

楢村准教授実際に医師の先生が行うこともあれば、看護師の方が行うこともあります。

ただし、看護師の方でも脱毛器の専門教育は受けていません。もちろん、医学に関する知識は豊富ですが、使っている装置に対する理解はサロンの施術者の方々とあまり変わりません。

そのため、事故を防ぐには装置の原理や扱いについて熟知することと、使用前・使用後の点検を怠らずに実施する必要があると思います。

TLG GROUP 編集部:装置の安全性を保つためにも、現場のオペレーションが重要になってくるのですね。

光脱毛といえば、「サロンで通い放題」「100円、50円で永久脱毛ができる」といった広告を見て脱毛サロンで契約する方も多くいらっしゃいます。

知識がない分、広告でサロンを選び、失敗してしまうケースも多く見受けられますが、失敗しないサロンを選ぶためにはどのような点に気をつけたら良いのでしょうか。

楢村准教授おっしゃる通り、何年通ってもなかなか効果が出なかったり、高額な長期契約を結んでしまい、脱毛が完了する前にサロンが倒産してしまって泣き寝入りするケースなども増えていますね。

例えば、「50円、100円で脱毛可能」という広告の場合、確かに少額で施術はしてもらえますが、施術箇所は多くても2箇所かつ、その1回限りというケースが多いのです。

TLG GROUP 編集部:50円、100円で脱毛を体験できれば、「脱毛は意外と手軽にできる」という認識になる消費者も多いと感じます。

楢村准教授そうです。それがサロン側の狙いです。このように、50円や100円で脱毛を体験して「もっと行きたい」と思ったときに高額な契約を勧めてくるケースが多くあります。

契約を結ぶ際に通い放題特典がついてきたり、ローンが使えたりするので、ひと月あたりの金額はお小遣い感覚で通うことができるというのも安易に契約を結んでしまう原因の1つでしょう。

ローンを組むと、月々2、3千円程度で通えるので、とても手軽だと感じる方も多いでしょう。しかし、よく考えてください。サロンやクリニックの経営を考えると、2,000円で全身脱毛をして儲かるはずがないのです。

当然、サロン側も最終的にそれなりのお金を回収できるように、甘い言葉や様々な契約プランで勧誘してきているということを知っておくべきでしょう。

TLG GROUP 編集部:確かに、月々の額が安くても総額で見ると30万円、40万円もの支払いになっていたという体験談をよく耳にしますよね。

楢村准教授そうですね。月々で割ると大した金額ではないので、お小遣いの範囲内でできることではあります。

分割していることで実感は湧きませんが、約40万円の借金を背負っていることとほぼ同じなので、そういったリスクを念頭に置いた上で契約することが必要だと思います。

TLG GROUP 編集部:最近は大手の脱毛サロンが倒産してしまい、契約したお金が返金されないという話もよく聞きます。有名な芸能人が出ているから経営も問題ないのだろうと判断してしまった方も多いのではないでしょうか。

楢村准教授芸能人を起用した広告CMを大々的に打っているサロンもあります。集客効果は絶大だと思いますが、その分、広告費は莫大です。このような脱毛サロンでは、新規の長期契約を次々に取り続けないと広告費が捻出できず、新規顧客が減少した地点で会社が回らなくなってしまうのが実情です。

だからこそ、大手サロンの多くは何十万円もする契約をローンで組ませ、お金を回収しているのです。そうして得たお金の多くは次の広告費として使われます。つまり、広告に莫大なお金をかけているサロンは、自転車操業に陥る危険性と隣り合わせと考えてよいでしょう。

TLG GROUP 編集部:良いサロンと失敗するサロンを見極めるコツなどはあるのでしょうか。

楢村准教授一番は「カウンセリングをしっかりしてもらえるか」という点です。また、もしお試しで施術を受けられる場合は、体験してみるのも良いと思います。

TLG GROUP 編集部:大事なのは、「最初に契約しない」ということなのですね。

楢村准教授そうですね。施術を受けた後にカウンセリングで「今日契約すると何%引きで契約できます」といった勧誘を受けたことがある方も多いでしょう。

しかし、その場合は後で後悔するというケースがかなり多いので注意が必要です。

繰り返しにはなりますが、契約をする際は都度払いや無料体験で1度体験をし、カウンセラーからしっかりとお話を聞き、不安なことはその場で確認して、一旦家に帰ってもう一度考えてから契約するようにしましょう。

施術後の腫れや痛みの経過も考慮した上で、次回行く時に契約するという流れがおすすめです。

TLG GROUP 編集部:大手だから良いわけではないのですね。

楢村准教授そうですね。大手の場合、個人経営のサロンとは異なり、サロンスタッフは定期的に入れ替わりますし指名もできません。サロンスタッフの施術技術も様々です。

そのため、言い方は悪いですが、アタリの施術者とハズレの施術者が存在します。上手なスタッフにあたれば、脱毛回数は少なく終わります。逆に、上手ではないスタッフにあたると何回脱毛をしてもなかなか毛は抜けません。

TLG GROUP 編集部:サロンスタッフのあたりはずれを見極めるポイントはあるのでしょうか。

楢村准教授結論から言うと、かなり難しいです。

初心者の場合、あまり経験がないので出力を下げて打つこともあるようです。そうすると、痛みはない代わりに何回打っても全然毛がなくならないということもあります。これを見極めるのは正直難しいですね。

TLG GROUP 編集部:痛みが少ないのを理由に光脱毛を選ぶケースもあると思うのですが、痛みを感じにくい光脱毛はそもそも毛が抜けにくいのでしょうか。

楢村准教授痛みを感じるレベルには個人差も大きいかと思います。また、部位によって痛みを感じやすい場所、感じにくい場所があります。たとえば、男女共通でV・I・Oと顔は痛みを感じやすいです。適切な出力で施術しているのであれば、痛みの感じやすさで効果に差が出るということはあまりありません。

TLG GROUP 編集部:ありがとうございます。サロンの施術とは別に、自宅の脱毛器を利用する方も近年増えてきたと思うのですが、家庭用脱毛器にはどのような特徴があるのでしょうか。

楢村准教授家庭用脱毛器は手軽に電気屋で買えるので、好きな時間に使うことができますし、サロンよりも安いですよね。

高い脱毛器でも10万円ぐらいで購入できますから、1つ買えば家でやりたい時に家族全員が使えるのもメリットです。

ただ、業務用の光脱毛器と比べると出力がかなり落ちるので、家庭用脱毛器で毛がなくなることはまずありません。

TLG GROUP 編集部:家庭用脱毛器を上手に活用する方法はありますか。

楢村准教授:よくおすすめしているのは、サロン脱毛や医療脱毛に何回か通い、ある程度満足するレベルまで毛が生えてこなくなった段階でメンテナンス用として家庭用脱毛器を活用する方法です。

TLG GROUP 編集部:サロン脱毛や医療脱毛と同時並行で家庭用脱毛器を使用することによって、相乗効果で抜けやすくなる、毛が生えにくくなるという効果はあるのでしょうか。

楢村准教授家庭用脱毛器を使うことによって、毛が目立たなくなる期間は長く維持できるようになるかと思います。

ただし、家庭用脱毛器は毛を除去する力は持っておらず、毛が生えるのを少し抑えるぐらいの効果しかありません。

例えば、光脱毛でも永久脱毛までいけば別ですが、そうでない時は1、2ヶ月経つと毛が生えてきます。それを生えにくくする効果は家庭用脱毛器にもあると思います。

TLG GROUP 編集部:毛が生えてくる期間を伸ばしたい場合は、家庭用脱毛器が有効に使用できるのですね。

ちなみに、脱毛において楢村様が考える重要なポイントというのはあるのでしょうか。

楢村准教授脱毛に通われる方の1番の目的は、「美肌になること」だと思います。脱毛サロンでは、そういった方々に向けて多種多様なプランが用意されています。自己処理が楽になる程度でよいのか、永久脱毛を目指すのか、毛穴まで無くして綺麗にしたいのか、によって受ける回数や期間は異なってきます。

そのため、毛をなくしたいというニーズは当然のこと、自分の脱毛の最終地点はどこにあるのかをしっかりと整理してから契約されることが大切だと思います。

TLG GROUP 編集部:痛みが少ないこと、美肌になることとは別に、どれだけ短期間で脱毛できるかを重視されている方も多いと思います。

期間を短くしたいがゆえにサロンを2・3社契約している方も見受けられますが、そうすると脱毛完了までの期間が短くなる効果があるのでしょうか。

楢村准教授:2・3社同時並行で通ったとしてもあまり脱毛の効果は変わりません。脱毛は肌にダメージが加わるので、1回照射したら2週間ほど間をしっかり空けることが大切です。

特に、医療脱毛のような強いエネルギーで施術する場合は、1ヶ月以上間を空けないと肌へのダメージがかなり強くなってしまいます。しっかり間隔を空けて行くのであれば、複数のサロンに通うことはまったく問題ないと思います。

予約がなかなか取れない場合は数社と契約した方が脱毛完了までの期間は短くなりますが、その分お金もかかります。なかなか予約がとれないサロンやクリニックは避けたほうが無難でしょう。

TLG GROUP 編集部:サロンによっては「2週間に1回」「1ヶ月に1回」「3ヶ月に1回」という風に、推奨される期間が異なる場合がありますが、なぜこのような違いが生まれているのでしょうか。

楢村准教授正直なところ、光脱毛の場合は3ヶ月も間を空ける必要はありません。

3ヶ月空けた方がいいというのは、単にそのサロンが予約でいっぱいで、3ヶ月程あとでないと予約を入れることができないというだけです。予約が取りやすいかどうかもサロン選びの際に確認した方が良いですね。

光脱毛のサロンであれば、1ヶ月に1回の施術でもまったく問題ありません。毎月通うとしたら単純計算で1年に12回受けられるので、大体の方は脱毛が終えられるかと思います。ただし、毛周期が長いV・I・Oや、しぶとい髭などは1年・12回の脱毛では足りないことが多く、もう少し通う必要があります。

TLG GROUP 編集部:毛周期の点においても、1か月に1回の施術で問題ないのでしょうか。

楢村准教授毛周期を考えると、いくら6ヶ月間で15回脱毛したとしても7ヶ月目には毛が生えてくることがあります。

毛周期は部位により異なりますが、大体1年から2年ほどですので、1年から2年かけて通うようなプランがおすすめです。通う期間を回数で均等割りしてサロンに通うのがベストな間隔だと思います。

TLG GROUP 編集部:期間を空けすぎると効果が低下してしまうということはあるのでしょうか。

楢村准教授それを検証した論文は今のところありませんが、脱毛の原理から考えると、医療脱毛の場合は間を空けてもさほど影響はないと考えられます。

光脱毛の場合は、あくまで組織にダメージを与えることによって少しずつ毛が生えてこなくなるものなので、ダメージを加えてから間が空けば元に戻ってしまう可能性はあるかと思います。

一旦通い始めたのであれば、できるだけ間を空けずに、根気よく通うのが良いでしょう。

今後の課題・研究テーマについて

TLG GROUP 編集部:続いて、楢村様がお考えになる脱毛業界が抱える課題があれば教えていただきたいです。

楢村准教授一番の課題は治療、施術の安全性を如何に担保するかということかと思います。

今年6月、美容医療での健康被害の相談や契約上のトラブルが増加していることを受けて、厚生労働省は専門家による検討会を立ち上げました。この傾向はサロンでも同様です。

LG GROUP 編集部:様々な課題がある中で、現場の環境における問題はありますか。

楢村准教授数多くの美容機器を使用している美容外科クリニックであっても、臨床工学技士のような医療機器に精通した人が勤務していないということが問題だと思いますね。

これは医療脱毛の問題でもあり、医療脱毛の場合はレーザー脱毛器をしっかりと管理できる人を配置するべきかと思います。

また、美容サロンは誰でも明日から開業しようと思えば開業できるような状況になっているので、認定資格を取得するように促したり、講習会を受けて適切に機器が扱えるようにしたりといった一定の縛りが必要でしょう。

TLG GROUP 編集部:医療事故のお話もそうでしたが、機器を適切に管理できる人材の育成は今後非常に重要となる点だと思います。

最近新たに研究されていることがあれば教えていただけますでしょうか。

楢村准教授:脱毛って、美しくなることだけが目的だと思っている方も多いのではないかと思います。

実は脱毛の世界は限りなく広く、用途はたくさんあると考えています。

例えば、アスリートは競技のパフォーマンスを最大限に発揮するために脱毛を行っています。競輪選手は風の抵抗を抑えるために、水泳選手は水の抵抗を抑えるために、といった感じです。また、私の大学のボルダリング部の選手は、テーピングが浮かないように定期的に足の剃毛を行う必要があり、重要な大会前にも剃毛しなければならない煩雑さがあることから、現在私の研究室で脱毛しています。

あと、我々の研究室では、医療的ケア児と呼ばれる、何らかの障害を抱えられているお子さんや、病気で寝たきりになってしまったお子さんの脱毛にも取り組んでいます。

子どもさんも思春期になると陰毛や髭が生えてきますが、女の子の場合は月経時や排泄物処理の際に毛があると介護の負担となってしまいますし、男の子の場合は髭が原因で人工呼吸器などがうまく装着できないといった問題が起こったりします。

そのために、安全カミソリ等で定期的に剃毛される保護者の方も多いようですが、皮膚を傷つけてしまうリスクがあり、感染症の原因にもなりかねません。また、剃毛作業自体が介護の負担となってしまいます。そういったお子さんには、早い時期からの脱毛を勧めています。

一方で、そういったお子さんに対する脱毛方法を色々と検討している最中ですが、1番ネックになるのは痛みです。脱毛特有の弾かれるような痛みをいかに軽減してあげるかが現在の研究課題でもあります。さらに、サロンにお越し頂かなくてもご自宅やご施設で出張施術が受けられるように、持ち運び可能な脱毛器の開発も行っています。

このように、私の研究室では脱毛の新たな可能性についての研究を積極的に行っています。

まとめ

TLG GROUP 編集部:本日はお時間をいただき、ありがとうございました。楢村准教授にインタビューして、以下のことがわかりました。

独自インタビューで分かったこと
  • 医療脱毛と光脱毛の違いは、レーザーと光の「エネルギー」の違いと、毛球部を破壊するかどうかにある。
  • なぜ脱毛ができるのかという原理は完全には解明されていない。
  • 短期間で脱毛を完了させたい場合かつ痛みに耐えられるのであれば医療脱毛、期間はかかるがあまり痛くない脱毛がよければ光脱毛がおすすめ。
  • 脱毛サロンを複数社通うのは、1社で脱毛をするのと効果は変わらない。予約を取りやすいサロンに通うべき。
  • 家庭用脱毛器のみでは、永久脱毛の効果はない。
  • 永久脱毛レベルまで到達しても、数年後には毛が再び生えてくる可能性がある。

脱毛がとても身近なものになった現在、広告や口コミを頼って脱毛サロンや医療脱毛を選択するのではなく、実際に体験し、自分のニーズにあったところで契約をすることが非常に大切です。

また、脱毛は単に美容目的ではなく、介護のしやすさなどを目的としたものも増加しています。

子どもから高齢者まで幅広い世代が利用できる、「痛み」がより感じにくい脱毛器の開発に今後も注目が集まりそうです。

取材・文:TLG GROUP編集部
記事公開日:2024年7月18日