中部大学 大場裕一 教授【日本唯一の発光生物研究室に独自取材!発光生物の生態に迫る】

中部大学 大場裕一 教授に独自インタビュー

日本で唯一の発光生物研究室の取り組みをご存知でしょうか。中部大学の大場裕一教授が指導するこの研究室では、ほとんど解明されていない発光生物の科学に焦点を当て、新たな知見をもたらすために日々の研究が行われています。

発光生物は非常に珍しい種類が多く、分かっていないことも多いですが、研究者たちの詳細な観察と先進的な分析手法により、その秘密が徐々に明らかにされつつあります。

この記事では、中部大学の大場裕一教授に、どのようにしてこれらの生物が研究され、何が新たに発見されたのかについて独自インタビューさせていただきました。

大場裕一教授の紹介
中部大学 大場裕一 教授

中部大学 応用生物学部 環境生物科学科
大場裕一(おおば ゆういち)教授

総合研究大学院大学生命科学研究科・分子生物機構論専攻。博士(理学)。

2007年から名古屋大学・大学院生命農学研究科・助教を務め、2016年から中部大学・応用生物学部,・准教授となる。2019年より現職。

専門分野は発光生物学。

2017年9月に第5回日本珍菌賞、2022年にアルス・エレクトロニカ賞を受賞。

著書として、『世界の発光生物―分類・生態・発光メカニズム』(2022)、『光る生き物の科学―発光生物学への招待』(2021)、『ホタルの不思議な世界』(翻訳監修:2018)など。

発光生物の役割とメカニズム

TLG GROUP編集部:先生の研究室は日本で唯一の発光生物研究室と聞いております。具体的にどのような生物を研究しているのでしょうか?

大場教授:我々の研究室では、非常に多様な生物を扱っています。光るバクテリアや細菌から始まり、キノコ・ホタルといった陸上生物、さらには光る深海魚まで研究対象としています。ミミズやカタツムリなども含め、光る生物であれば何でも研究の対象になります。

TLG GROUP編集部:具体的にどのような研究を行っているのでしょうか?

大場教授:まずは発光生物を見つけることから研究が始まります。世界にはまだまだ知られていない光る生物がたくさんいますからね。

そして、その生物がどのようにして光を発しているのか、その化学的メカニズムを解明するのが主な研究です。また、光ることが生物にとってどのような役割を果たしているのかも研究しています。

例えば、捕食されるのを避けるためや、配偶者を引きつけるために光を使っていることが多いです。

TLG GROUP編集部:生物が光ることには様々な意味があるのかもしれませんね。

大場教授:まさにその通りです。さらに、私たちは生物が光る能力をどのように獲得してきたのかという「進化」についても研究しています。

光る能力は元々持っていたわけではありません。進化の過程でいつ・どのようにして獲得されたのか、そのプロセスを解明することができれば、進化生物学の大きな疑問に答える手がかりになるかもしれません。

TLG GROUP編集部:進化の過程で光る能力を獲得するなんてとても興味深いです。発光生物の光はどのようにして生成されるのでしょうか?

大場教授:生物が光る現象は基本的には体内で起こる化学反応によるものです。この化学反応は、エネルギーを放出する過程で光として現れます。普通の化学反応で熱が発生するのと似ていますが、この場合は光としてエネルギーが放出される仕組みです。

例えば、使い捨てカイロを振ると温かくなる反応がありますが、それはエネルギーが熱として放出される反応です。一方で、光る生物の場合はそのエネルギーが光として放出されます。これを「発光反応」と呼んでいます。

TLG GROUP編集部:生物はなぜ光るのでしょうか?

大場教授:光る理由は、生物によって様々です。ホタルの場合は、オスとメスがお互いを見つけるためのコミュニケーション手段として夜に光を発します。

他には、深海の生物が獲物を引き寄せるために光ることもありますね。また、敵を驚かせたり、警戒させたりするために光る生物もいます。

著書「世界の発光生物」の紹介

TLG GROUP編集部:著書である『世界の発光生物―分類・生態・発光メカニズム』では、発光バクテリアからチョウチンアンコウまで、さまざまな発光生物について詳しく紹介されていますが、大場様が特に興味深いと感じる生物について教えていただけますか?

大場教授:世界にはホタルやイカ、チョウチンアンコウなどよく知られている発光生物も多いですが、意外と知られていない面白い生物も多く存在します。

私が特に興味を持っているのは、東南アジアに生息するカタツムリです。日本では見られない珍しい種で、その光る部分はなんと口の近くにあり、ピカピカと点滅します。

TLG GROUP編集部:それは珍しいですね!そのカタツムリについての研究は現在も進行中ですか?

大場教授:実はまだあまり研究が進んでいなくて、その生態や発光の詳細はほとんど分かっていません。だからこそ、非常に興味深く研究価値があると感じています。

TLG GROUP編集部:具体的にこの研究が面白いと感じる点を教えてください。

教授:やはり、普段見慣れた姿の生物が突然光を放つというギャップが面白いですね。例えば、見た目は普通のミミズが、刺激に応じて光を発することや、一見普通のカタツムリが光る場合も、その予期せぬ発光が非常に驚きですし、魅力的に感じます。

TLG GROUP編集部:それは確かに驚きますね。では、発光生物の研究における苦労や発見についても伺いたいです。

大場教授:この分野の研究は多くの挑戦をしなければなりません。この分野は、1985年以降まとまった情報を網羅した本が日本にありませんでした。そこで、1985年以降の発光生物に関する新しい発見を網羅的にまとめることを目標としていました。

過去の文献だけでなく、最新の研究成果を集めるのが大変でしたが、それによって新しい情報を提供できたので、非常に満足しています。

TLG GROUP編集部:現場での調査はどのような困難がありましたか?

大場教授:発光生物は夜間に活動することが多いので、昼間はほとんど観察ができません。それが物理的にも精神的にも大変な部分でした。

外国や遠く離れた場所での調査では、夕食後も再びフィールドに出かける必要があるわけですから、かなりの努力を要します。

光る生き物たちを通して見える世界の魅力

TLG GROUP編集部:先生の研究室では発光生物の研究成果を教育ツールの開発にも応用されているとお聞きしました。その具体的な応用例や研究の未来展望について教えていただけますか?

大場教授:実際に私たちの研究で発見されたホタルやミミズなどが教育現場で活用されています。例えば、小学校や科学館でのイベントで子どもたちにミミズを探しに行ってもらったり、その発光現象を観察してもらったりする活動をしています。

特に、公園や学校のグラウンドで簡単に見つかることが多いです。暗い場所でミミズがどのように光るかを見せると、子どもたちは大変喜びますし、科学への興味や好奇心を刺激することもできます。

TLG GROUP編集部:発光生物の不思議を通じて、科学の面白さを伝えることができるわけですね。

大場教授:はい、まさにそうです。このような活動を通じて、生物学だけでなく、科学全般に対する興味を持ってもらうことが教育の一環として非常に重要だと考えています。

今後も日本国内だけでなく、海外でも新種の発光生物を発見し、それらの生物の研究を進めることで、さらに多くの教育的応用が期待できます。

TLG GROUP編集部:研究の未来展望についてもお聞かせいただけますか?

大場教授:はい、現在もタイで新しい種類の光るカタツムリを発見するなど、活動は続けています。

研究範囲を日本だけでなく、国外にも広げれば、未知の発光生物に出会える可能性が広がります。これらの生物を見つけ出し、その発光の仕組みを解明することが私たちの目標です。

TLG GROUP編集部: 先生が発光生物研究に情熱を感じる理由は何ですか?特に熱中する要因や、研究の魅力について教えてください。

大場教授:元々生物学が大好きで、発光しない生物にも広く興味を持っていました。光るという特性はただ自分が楽しむだけでなく、多くの人に興味を持ってもらえる可能性が高いです。

だからこそ、人々にも楽しんでもらえるような研究を選んでいます。発光生物はその面で非常に魅力的です。

TLG GROUP編集部:確かに、今回のお話を聞いて私も発光生物が魅力的だと思うようになりました。今後の研究で期待される成果についてはどのように思いますか?

大場教授:これからも珍しい発光生物を探し出し、自然界の不思議を多くの人に伝えていきたいですね。その驚きを共有することで、自然への関心を高め、科学への理解を深めてもらえればと考えています。

まとめ

TLG GROUP編集部:本日はお時間をいただき、ありがとうございました。大場教授にインタビューして、下記のことが分かりました。

独自インタビューで分かったこと
  • 大場教授の研究室は日本で唯一の発光生物研究室であり、光るバクテリア、キノコ、ホタル、深海魚など多様な生物を対象にしている
  • 研究の主な焦点は、発光生物の未知の生態の発見、発光メカニズムの解明、および発光が生物にとって果たす役割
  • 光る現象は、生物内での化学反応によりエネルギーが光として放出される「発光反応」によるもの
  • 大場教授は特に東南アジアの光るカタツムリに興味を持ち、その珍しい発光現象の研究を進めている
  • この研究は教育現場でも応用されており、子どもたちが科学に興味を持つきっかけとなっている

日本で唯一の発光生物研究室の魅力と科学的な可能性について取材しました。発光生物は、その不思議な光を通じて多くの秘密を持っており、研究は生態系の理解を深めるだけでなく、他分野への応用可能性を探る手がかりも提供しています。

今後、これらの生物がどのように生き延び、私たちの生活や環境にどう影響するか、さらなる研究が求められます。私たちにできることは何か、そしてどのように支援すべきかを考えましょう。

また、これらの生物が発する光のメカニズムの解明は、医療や環境保全、さらには持続可能なエネルギー源としての利用を視野に入れた研究へとつながっていくと期待されます。私たちも公共の支援をしている一人の人間なのだという自覚を忘れないようにしましょう。

取材・文:TLG GROUP編集部
記事公開日:2024年6月15日