駿河台大学 佐川和彦 教授【日本人の主観的健康度と客観的健康度の乖離】

駿河台大学 佐川和彦 教授に独自インタビュー

一人一人の健康感覚は、その人の生活や意思決定に大きな影響を与えます。

しかし、それが科学的なデータとどれほど合致しているのでしょうか?健康に関する自己評価は、客観的な健康状態と一致しているとは限りません。

この記事では、駿河台大学の佐川和彦教授に日本人の主観的な健康感と客観的な健康データの乖離に焦点を当て、独自インタビューさせていただきました。

佐川和彦教授の紹介
駿河台大学 佐川和彦 教授

駿河台大学 経済経営学部
佐川和彦(さがわ かずひこ)教授

1985年に早稲田大学商学部を卒業後、1995年に早稲田大学大学院・経済学研究科・博士後期課程を単位取得満期退学。博士(経済学)。

1995年、東海大学短期大学部にて専任講師となる。1999年から東海大学短期大学部の助教授、2001年から駿河台大学経済学部助教授、2007年から駿河台大学経済学部(経済経営学部に名称変更)教授を務め、現在に至る。学部長、大学院専攻長を歴任。

専門分野は経済政策(キーワード:医療経済学)。

著書として、『これからの暮らしと経済』(共著:2023年)、『少子・高齢化と日本経済』(共著:2014年)、『日本の医療制度と経済-実証分析による解明-』(2012年)など。

日本における医療費増加の動向

TLG GROUP編集部:早速ですが、近年の日本における医療費増加の主な原因について教えていただきたいです。

佐川教授:分かりました。ちなみに、TLG GROUP編集部さんはその原因を何だと考えていますか?

TLG GROUP編集部:少子高齢化でしょうか。特に、高齢者の増加に比例して医療費も増えている印象があります。

佐川教授:そうですよね。多くの方は少子高齢化、特に高齢化によって医療費が増加しているという風に考えていると思います。

しかし、実は高齢化が医療費増加に与える影響というのはそこまで大きくないのです。

私は以前、人口の年齢構成の変化が日本の将来の医療費にどのような影響を及ぼすかを予測したことがあります。

その研究では、医療費関数というものを推定して、その結果をもとにして将来の医療費を予測したのですが、高齢化だけでは医療費が大幅に増加するという結果は得られませんでした。

つまり、日本の医療費が増加しているのは高齢化以外の要因があると言えるのです。

TLG GROUP編集部:高齢化以外の要因というと、具体的にどういったものが挙げられるのでしょうか?

佐川教授:有力候補の1つとして挙げられるのは、医療技術の進歩です。

一般的な産業では技術進歩が進むたびにコスト削減に繋がることが多いですが、医療分野は異なります。

新しい技術や治療法、薬の開発は逆に医療費のコストを押し上げることが多いのです。

TLG GROUP編集部:その技術進歩によるコスト増加についてもう少し詳しく教えていただけますか?

佐川教授:新しい技術は病気の治療や患者の苦痛を軽減するために使われますが、製品として社会に出ると大変高価なものになります。

なぜなら、研究開発のコストは高く、それが製品価格に反映されてしまうからです。そのため、技術が進むほど新しくて高価な薬が市場に流出し、全体としての医療費が上昇していきます。

TLG GROUP編集部:医療の研究開発には時間とお金がかかるというのはイメージできるのですが、具体的にはどういったところに時間やコストがかかっているのでしょうか?

佐川教授:実際に新しい薬を開発する際には科学的な研究開発が必要で、これには多額の費用と時間を要します。

さらに、薬効や人体への副作用がないかを確認するための治験も必須で、これがまた長期間に渡るのです。

TLG GROUP編集部:研究開発の過程での失敗も多いのでしょうか?

佐川教授:詳しく調べたわけではないのですが、どのような研究でも基本的に失敗が付きものだと考えています。

つまり、お金をかけても失敗するかもしれないというリスクが高いため、成功した新薬が市場に登場した場合、その価格は高く設定されます。

TLG GROUP編集部:新薬の価格を高く設定することは、製薬会社にとって必要な措置なのですね。

佐川教授:新薬が安価で売られると、その後の研究開発資金の確保が困難になります。ですから、薬の高価格化は避けられない現実と言えるでしょう。

しかし、我々は医療保険制度を通じて患者が薬を少しでも安く購入できるように努力しています。

TLG GROUP編集部:確かに、医療保険制度があることによって自己負担額は大きく抑えられていると思います。

佐川教授:そうですね。患者の自己負担が軽い分、全体の医療費が増えるのはやむを得ないでしょう。

また、私たちが新しい医療の技術を期待すること、研究者の方々が医療技術の開発を進めることも当たり前のことです。

高齢化自体は決して悪いことではありません。もちろん、社会に大きな影響を及ぼす現象ではありますが、それを受け入れて社会全体でどのように対応していくかを大切にしていくべきだと思います。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。「高齢化」という言葉について悪い印象ばかりを持っている人も多いかもしれませんが、決してそうではないのですね。

「高齢化は社会に影響を及ぼす」というお話がありましたが、医療以外の場面で高齢化が及ぼす影響というと、どのような例が挙げられるのでしょうか?

佐川教授:労働力の減少、あるいは所得の格差というのが挙げられます。

若い人の場合、働き始めた頃の給与の差というのはそれほど大きくありません。

しかし、特別な例を除いて、普通の社会人は何十年も働き続けると、その所得の差はどんどん広がっていきます。

さらに、所得の格差に伴って資産の蓄えも異なってきます。

高齢者層は所得格差が大きいグループですので、高齢化の進展は日本全体の所得格差を広げることにつながります。

TLG GROUP編集部:高齢化と経済は密接につながっているのですね。医療費のお話に戻りますが、他国と比較した際の日本の医療のコストパフォーマンスについてもご解説いただけますか?

佐川教授:医療のパフォーマンスという点でよく使われる指標の1つは平均寿命です。健康状態を見るためによく使われるもので、医療の成果を示すものでもあります。

男性と女性の平均寿命の加重平均値をもとめると、日本はトップになりますね。

しかし、「医療にどれだけのお金をかけたのか」という1人当たりの医療費と、医療費の対GDP比率を見てみると、日本はトップではありません。

TLG GROUP編集部:確かに、どちらの指標もアメリカが圧倒的トップですね。

佐川教授:そうですよね。つまり、日本は少ないコストでもって平均寿命がトップという成果を生み出しているのです。

一言で言うと、日本の医療はコストパフォーマンスが極めて高いということになります。

このことから、多くのお金をかけたからと言って健康になるわけではないことが分かりますよね。

TLG GROUP編集部:では、アメリカの医療は無駄な部分が多くあるのでしょうか?

佐川教授:そのような見方もできなくはないですが、最終的にはそのお金がどのように使われたかが重要です。

例えば、アメリカは医療の開発にとてもお金を掛けています。実際、多くの成果は出ているのですが、それが国民全体に行き渡っているかというとそうではなく、医療格差社会となっている可能性があるのではないでしょうか。

また、医療費が必要なのは健康でない人に治療をするためです。つまり、「健康でないから医療費がかかってしまう」という逆の因果性がある可能性も考慮する必要があります。

TLG GROUP編集部:なるほど。そう考えると、必要な時にきちんとした医療が受けられる日本の健康保険制度は本当に優れているのですね。

佐川教授:そうですね。日本の医療制度が優れているからこそ、コストパフォーマンスが高いのです。

また、他国に比べて温暖な気候であることも、健康水準の高さに繋がっているのだと思います。

被保険者の受診行動と医療サービスの適切な管理

TLG GROUP編集部:私たちは、様々な医療保険に加入し、保険料を支払っていますよね。このように公的医療保険の被保険者が保険料を支払うことで、受診行動にも変化が現れるものなのでしょうか?

佐川教授:私は被保険者の受診行動について研究したことがあるのですが、その研究では3つの仮説があります。

1つは、保険料は被保険者の受診行動に影響を与えないというものです。これは、正統派の経済学が想定する考え方となっています。

2つ目は、支払った保険料を回収しようと考えて通院回数を増やすというものです。こう言った行動は、損失回避の心理や権利意識が芽生えたことによって発生すると考えられています。

そして3つ目は、保険料の支払いによってコスト意識が芽生え、医療サービスのコスト節約のために受診を控えるという行動です。

このように、保険料の支払いによってその人の受診行動に変化が現れるというのは興味深い問題ですが、注意しておきたいのは「保険料の支払いで直接的なリターンが得られるわけではない」という点です。

例えば、パン屋でパンを買う時はお金を支払うとすぐにパンを手に入れることができますが、医療保険はそうではありません。

保険料を支払うことで、病気になった際に必要な医療を非常に安い自己負担で受けられるようになるわけです。

TLG GROUP編集部:保険料を支払っても病気にならなければ、そのお金は戻ってこないということでしょうか?

佐川教授:その通りです。支払ったお金は、病気にならなければ直接的には戻ってきません。

このような形で戻ってこないお金のことを経済学では「サンクコスト(埋没費用)」と言います。

TLG GROUP編集部:なるほど。そうなると、先ほどの2番目の仮説は戻ってこないお金の元を取ろうとする、非合理的な行動とも考えられるのですね。

佐川教授:そうですね。保険料が上がると人々はより多く医療サービスを利用しようとする傾向があります。保険料を多く払っているのだから、それに見合うだけの医療サービスを受けようとするわけです。

しかし、本来は必要のない医療を受けることになりますから、結果的に自己負担額も増え、経済的な損失を招くことになります。

つまり、保険料の元を取りたいという思いが、かえって余計な出費を引き起こしてしまうのです。

基本的に、経済学は合理性を基に理論を作り上げます。

しかし、今回の被保険者の受診行動については、その合理性が通用しません。このように、人間の理論的に予想される行動とは異なる、矛盾した行動を研究する学問のことを「行動経済学」と呼ぶのです。

TLG GROUP編集部:確かに、冷静になれば合理的でないと判断できることでも、一時の感情や直感で不合理な行動を取ってしまうことはよくあります。この場合、3つ目の仮説のようにコスト節約の意識を持った方が良いのでしょうか?

佐川教授:コスト意識は良いことのように感じられるかもしれませんが、たとえ保険料が変わったとしても受診行動は変えない方が合理的と言えます。

TLG GROUP編集部:それはなぜなのでしょうか?

佐川教授:コスト節約の意識が度を越してしまうと、医療が必要な状況であるのに我慢してしまうという可能性があるからです。

必要な医療を受けられずにいると、かえって病気をこじらせ、結果的により多くの医療費が必要となってしまいます。

無駄なコストを削減することは良いことではありますが、無理に受診回数を減らすのは決して合理的な行動とは言えません。やはり、必要な時に必要な医療を受けるのが一番良い行動なのではないでしょうか。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。コスト意識を持つことは悪いことではありませんが、適切なラインというものがあるのですね。

2番目の仮説で「より多くの医療サービスを利用しようとする傾向がある」というお話がありましたが、実際に医療サービスが過剰利用された事例があったのでしょうか?

佐川教授:そうですね。保険料の元を取ろうとするという話とは別ですが、老人医療費支給制度があった時代は、自己負担がゼロだったために病院がいわば「サロン化」してしまいました。

サロン化とは、高齢者が実際には必要ないのに、お金がかからないために頻繁に医者に行く状態を指します。

彼らは医者に行くことを社交の場として利用し、医療機関は実質的に無料の集会所のようになってしまいました。

これが結果として、必要のない医療サービスの利用を増やし、無駄な医療費を増加させる原因となったのです。

TLG GROUP編集部:実際には医療費がかかっているものの、患者が直接支払う費用がないため、多くの人が無料のように感じてしまったのですね。

佐川教授:その通りです。その結果、無駄な医療費が増えてしまい、大きな問題となりました。

TLG GROUP編集部:なるほど。それで近年は高齢者も一定の自己負担が求められるようになったのでしょうか?

佐川教授:はい。平成20年からは75歳以上の方は1割負担、70~74歳の方は2割負担、現役並み所得者であれば3割と、場合によっては高齢者に現役世代と同じだけの負担をしてもらうような制度が整えられています。

もちろん、自己負担は医療保険の財政を破綻させないためでもありますが、それ以上に必要のない医療サービスの利用を抑制する意味合いが強いでしょう。

やはり、「自己負担がある」というのは非常に大事なことだと思います。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。反対に、医療サービスの過少利用という問題もあるのでしょうか?

佐川教授:そうですね。発展途上国では、医療が不足しているという背景があるため、医療サービスの過少利用は避けられない問題となっています。

一方で、日本のような先進国では医療サービスの過少利用は中々起こりません。 しかし、所得の低い人々は、医療費を節約しようとする可能性があり、これが過小利用につながることもあります。

主観的健康度と客観的健康度とは

TLG GROUP編集部:日本人は平均寿命が高い一方で、「自分は健康ではない」と考える人が多くいるように思います。実際、日本人にはそういった傾向が見られるのでしょうか?

佐川教授:そうですね。日本人には主観的健康度と客観的健康度の乖離が見られます。

そもそも、主観的健康度とは、幸福度調査のようにアンケートで「あなたは今、健康ですか?」と質問されて、自分で評価するものです。

TLG GROUP編集部:なるほど。自分の感じ方をそのまま答えるということですね。

佐川教授:そうです。例えば「最近体の具合が悪いな」と感じていれば、「健康じゃない」と答えることになります。これは自分の気持ちや体調の感じ方に基づいて答えるものです。

医者から何か言われたとか、健康診断の結果だけを基にして答えるのではなく、あくまで自分の中の素直な気持ちを反映するものになります。

一方、客観的健康度は、平均寿命のような指標で測られます。世界中で広く使われている指標ですから、どれだけ長生きするかということが客観的な健康度を表しています。

つまり、主観的健康度と客観的健康度の乖離とは、心の中で考えている健康度と客観的な健康状態に大きな差があるということなのです。

TLG GROUP編集部:なるほど、日本人の主観的健康度と客観的健康度にはどのような乖離があるのでしょうか?

佐川教授:日本の客観的健康指標、例えば平均寿命は非常に高いレベルにありますが、一方で国民が感じる健康感はそれに比べて極端に低いとされています。

これは、文献や調査でしばしば指摘される現象です。韓国も同様の傾向が見られますが、日本はより顕著ですね。

TLG GROUP編集部:OECD加盟国における日本の主観的健康度は本当に低いですね。そもそも、日本人の主観的健康度がこれほど低いのはなぜなのでしょうか?

佐川教授:この問題には複数の要因が考えられます。一つは文化的背景です。日本人の国民性や文化が、健康感覚に影響を与えている可能性があります。

もう一つは医療の質です。日本の医療水準は非常に高く、これが客観的な健康指標を押し上げています。

また、これはあくまで私の考えではありますが、日本は地震や台風といった自然災害が非常に多く、これが国民の心理に大きな影響を与えている可能性があります。

私たちはいつ災害が起きるのかも分からない状況で暮らしています。常に何か大きな災害が起こる可能性を意識して生活しているのです。病気についても同じで、今は健康でも、いつ病気にかかるか分からないと考えているのかもしれません。

TLG GROUP編集部:一見関わりがないように感じるものも、原因として繋がることがあるのですね。

佐川教授:そうですね。もしかしたら、常に悪いケースを想定することが身に沁みついてしまっているのかもしれません。

このように、日本人は「楽観的に物事を考えない」ということを生きる術として持っているのだと思います。これは災害だけでなく、自分の健康についても同じです。

データとして立証することは難しいですが、主観的健康度が低い傾向にあるのは、こういった日本人特有の感覚があるからなのではないでしょうか。

また、楽観的に物事を捉えないところが、結果的に日本人の客観的健康度を上げる方向に繋がっているのかもしれませんね。

TLG GROUP編集部:なるほど。意識はしていませんでしたが、私も同じように考える時があるかもしれません。日本の健康システムや医療制度において、今後の課題として重要な取り組みは何だと思いますか?

佐川教授:やはり、医療費の増加というのは大きな課題で、特に資源配分の問題が重要です。

経済学的にも、限られた資源をどのように効率良く配分するかが、問題解決の鍵を握っています。

TLG GROUP編集部:資源配分についてもう少し詳しく教えていただけますか?

佐川教授:私たちは食事をして、電車乗って仕事に行き、その中でいろいろなものに資源を使わないといけません。残念ながら、医療だけにすべての資源を投入することはできないのです。そのためには、医療費の無駄を削減し、限られた資源をより必要な医療に集中させる必要があります。

日本国内の医療費はずっと増加し続けていますが、これからも無限に医療費を増やしていくことは不可能です。このままでは、本当に必要な医療と優先順位が低いものを区別し、後者については諦める選択をしなければならない時期が来るかもしれないのです。

ですから、医療システムが破綻しないように、制度を改革していかなければならないでしょう。

TLG GROUP編集部:国民はその取り組みによってかなり影響を受けるかもしれないですね。

佐川教授:国民には確かに影響があります。必要に応じて政府が国民に対して丁寧に説明していかなければなりません。

今の医療制度・医療保険を維持するためには、いろいろな難しい選択を避けることはできません。

TLG GROUP編集部:医療費の無駄というと、終末期の医療の継続についてはどのように考えるべきでしょうか?家族は患者の最後まで治療を望むことが多いですが、一方で医療的な意味で無駄だという声も耳にしたことがあります。

佐川教授:私は、終末期の医療は決して無駄とは考えていません。

確かに、冷静に考えたら意味がない、無駄な医療だと思う方もいるかもしれません。しかし、たとえそうだとしても手を尽くして、患者の家族が納得する過程は必要だと思うのです。

TLG GROUP編集部:自己負担が増えすぎると医療保険の意義が非常に薄くなってしまいますから、どこまで増やすかが重要になりそうですね。

佐川教授:そうですね。現在は基本、30%の自己負担ですが、仮に、これを35%や40%に引き上げるとしましょう。

すると、しばらくは医療費を抑制する効果があると思います。しかし、人間は慣れる生き物なので、時間が経過すれば、増えた負担にも慣れてしまう可能性が高いです。

つまり、医療に対する意識改革がされない限り、保険料の引き上げには意味がないです。私個人としては、現在の自己負担3割はほどよい水準だと考えています。

TLG GROUP編集部:医療に対する意識改革とは、具体的にどういうことなのでしょうか?

佐川教授:健康教育などを通じて、医療費に無駄がないかを一人一人がよく考え、健康に対する意識を高めていくことです。

特に、厚生労働省などの公的機関だけでなく、我々も日常生活の中で適切な医療の水準を理解し、それに基づいて行動することが求められます。

持続可能な医療システムを目指して、各個人が意識を高める運動を継続していく必要があるでしょう。

TLG GROUP編集部:確かに、選挙での演説や講演を聞いた時だけ医療に対する意識を高く持ったとしてもあまり意味がないように思います。それこそ、普段から目にするメディアなどで考える機会が増えたら良いかもしれませんね。

佐川教授:そうですね。一度や二度の取り上げではなく、継続して問題を提起し続けることで、より多くの人々に伝える必要があります。

ただの一時的な話題にするのではなく、持続的な議論をすることによって医療費の問題を解決する一手にもなりますし、私たちの幸福度を上げることにも繋がるのではないでしょうか。

まとめ

TLG GROUP編集部:本日はお時間いただきありがとうございました。佐川教授にインタビューして下記のことが分かりました。

独自インタビューで分かったこと
  1. 日本の医療費増加の主要因は、高齢者の増加による医療ニーズの高まりと、新しい治療法や新薬の開発など、医療の技術進歩である
  2. 医療技術の進歩は避けられないコスト増をもたらし、新薬や治療法の開発には高額な投資が必要である
  3. 高齢者の増加は所得格差の拡大にも関連している
  4. 日本はコストパフォーマンスが高く、他国と比較して医療サービスの質を保ちながら医療費を低く抑えている
  5. 医療費の増加を抑えるためには、国民の健康意識の向上と政策レベルでの支援が求められ、必要な医療に資源を集中させなければならない

日本人の健康に対する主観的評価と客観的指標の間には、大きな隔たりが存在します。

今後、私たちは健康教育を強化し、正確な健康情報の提供を通じて、この乖離を埋める努力が必要です。

また、日本の医療制度の発展や少子高齢化に伴って、自己負担が増加していくのは致し方ありません。現状の課題や不満を解決するには、私たちの意識自体を見直していく必要があるでしょう。

取材・文:TLG GROUP編集部
記事公開日:2024年6月27日