筑波大学 山田雄二 教授【電力市場での金融工学の実践的応用とデリバティブを用いた戦略】

筑波大学 山田雄二 教授に独自インタビュー

電力市場は私たちの生活に欠かせないエネルギー供給の基盤として、日々進化を遂げています。

特に、近年の市場変動や再生可能エネルギーの導入が進む中で、金融工学とデリバティブによるリスク管理がどのように役立っているのでしょうか。

今回は、筑波大学の山田雄二教授に電力市場での金融工学の実践的応用とデリバティブを用いた戦略について独自インタビューを行いました。

山田雄二教授の紹介
筑波大学 山田雄二 教授

筑波大学ビジネスサイエンス系
山田雄二(やまだ ゆうじ)教授

東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士後期課程修了(博士(工学))。

1998年より日本学術振興会特別研究員(同年8月よりアメリカ合衆国カリフォルニア工科大学に滞在)、2000年よりカリフォルニア工科大学ポスドク研究員。その後、2002年より筑波大学大学院ビジネス科学研究科助教授、2007年より同准教授(ただし2011年よりビジネスサイエンス系准教授)、2013年より現職。2015年より2017年までビジネス科学研究科経営システム科学専攻・専攻長、2018年より2021年までビジネスサイエンス系・系長を務める。2023年より一般社団法人 日本金融・証券計量・工学学会 (JAFEE) 会長。

専門はファイナンス工学、社会システム工学・安全システム、制御・システム工学。

近著・論文(共著・編著含む)として、「The evolution of capital structure and debt governance: Evidence from private equity-backed companies in Japan」(2023年)、「Construction of Mixed Derivatives Strategy for Wind Power Producers」(2023年)、「Pricing Multi-Asset Bermudan Commodity Options with Stochastic Volatility Using Neural Networks」(2023年)など。

金融工学の実践的な応用と利点

TLG GROUP編集部:金融工学という分野について多くの人がまだ馴染みが薄いと思いますが、初心者にも理解しやすいようにどんな学問分野なのかを教えていただけますか?

山田教授:金融工学は、主に数理モデルや統計手法を用いて金融市場を分析し、理解する学問の総称です。

具体的には、資産価格の変動予測、リスク推定や管理など、広範な活動を含んでいます。また、日常的に目にする投資信託の設計や新しい金融商品の価格付けをするのにも、金融工学の研究成果が使われていると考えてよいでしょう。

このように、金融工学とは数理や統計技術、あるいは情報技術を用いて金融市場を分析・モデル化する分野です。

TLG GROUP編集部:資産価格の変動をモデル化するとはどういうことか、もう少し詳しく教えていただけますか?

山田教授:金融工学では、日々観測される資産価格のデータに数式やアルゴリズムを当てはめることによって、資産価格の変動をモデル化していきます。

こういった資産価格変動のモデル化は、価格変動に伴うリスクをコントロールすることを目的の一つとして行われているものです。

TLG GROUP編集部:金融工学が実際に応用される場面としては、どのような例がありますか?

山田教授:金融工学は、特にリスク管理や金融派生商品の価格評価において重要な役割を果たしています。具体的な応用例としては、リスクが伴う大規模な投資における意思決定、デリバティブの価格設定、金融危機時の市場リスクの評価などが挙げられます。

また、ポートフォリオの最適化、つまり投資家が保有する資産の組み合わせを調整して、リスクとリターンのバランスを最適化する作業にも用いられます。

TLG GROUP編集部:デリバティブというと聞き慣れない方も多いかもしれません。もう少し詳しく教えていただけますか?

山田教授:デリバティブは、株式や債券といったすでに取引されている伝統的金融商品の価格に対して導入される契約で、日本語では金融派生商品と呼ばれます。

代表的なデリバティブとしては、オプションや先物が挙げられます。オプションや先物というのは、将来の株式価格を事前に固定したり、あるいは固定価格で取引する権利を現時点で購入したりする契約のことです。

これらの商品を利用することで、投資家は価格の変動リスクから自己の資産価値を守りつつ、市場での取引機会を最大限に活用できます。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。デリバティブはどのようにしてリスク管理やヘッジ戦略に貢献するのでしょうか?

山田教授:デリバティブの利用には大きく分けて投資目的とヘッジ目的の2つがあります。

このうち、投資目的とはデリバティブ自体を株式と同じように将来収益をもたらす可能性がある資産と考え、投資家が購入するものです。

例えば、株式相場が上昇することを期待する投資家は、コールオプションを購入します。コールオプションとは商品を買う権利であり、将来の株式価格があらかじめ決められた価格を上回る場合に行使価格と株式価格の差額を受け取ることができるものです。

つまり、コールオプションを購入後、株価が上昇すれば利益が生じますし、株価が行使価格を下回ったとしても、損失額は最初に支払ったオプション価格に限定されるのです。

一方、ヘッジ目的というのは、いわゆる保険と同じような目的でデリバティブを利用するものです。

例えば、株価の下落リスクに対しては、プットオプションを購入することで対応できます。プットオプションとは商品を売る権利であり、将来の株式価格があらかじめ決められた価格を下回る場合に行使価格と株式価格の差額を受け取ることができるものです。

つまり、株式とプットオプションを同時に保有することによって、株価が下落したとしても、その分をプットオプションの支払額によって補填することができるのです。

また、将来の株価が予想以上に上がることによって損失のリスクがある時は、コールオプションを使用して一定の価格で株を購入する権利を確保します。そうすると、将来の調達価格を固定化し、調達コストを抑えることができるのです。

このように、デリバティブを適切に利用することで、予期しない市場の動きに対して柔軟に対応し、潜在的な損失を抑制しながら利益を追求することが可能です。

デリバティブの価格戦略

TLG GROUP編集部:山田教授は電力市場のデリバティブに関する研究を行っているとのことですが、この研究分野を選んだ背景について詳しく教えていただけますか?

山田教授:私が電力市場の研究を始めたのは、もともと天候デリバティブに興味があったからです。

先ほど、金融商品に対する契約としてデリバティブ(金融派生商品)を紹介しましたが、天候デリバティブとは、将来の気象データに基づいて支払額が決定されるものです。ある特定の期間・地域の気温に基づいて支払額が決まる天候デリバティブは、季節や気象条件によって大きく収益が左右される企業にとって非常に有用です。

TLG GROUP編集部:具体的な例を教えていただけますか?

山田教授:例えば、8月の平均気温が30度と予測されている場所で、気温が26度にとどまったとします。この場合、事前にプットオプションを購入しておくことによって、4度の差に基づいた金額を受け取ることができます。

このような契約を事前に結ぶことによって、気温変動による損失を補償することができるのです。特に、アイスクリーム販売業者やビール製造業者など、気温によって売り上げが大きく左右される企業は、損失を避けるために天候デリバティブを利用することができます。

TLG GROUP編集部:そういった天候デリバティブを販売しているのは、どういった企業なのでしょうか?

山田教授:日本では、保険会社がこれらのデリバティブを取り扱っています。

また、先ほどは気温によって売り上げが大きく左右される企業が天候デリバティブを購入すると言いましたが、電力会社やガス会社など、気象条件によって需要が左右されるエネルギー事業者も積極的に天候デリバティブの市場で取引を行っています。

特に、2000年代初頭に電力会社・ガス会社による天候デリバティブの取引が行われたことが大々的に報じられたこともあり、私自身、電力市場に特化したデリバティブの研究に関心を寄せるようになりました。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。そもそも、電力市場と金融市場はどのような違いがあるのでしょうか?

山田教授:金融市場では、株や債券のような金融商品が取引され、これらの商品は取引する時間によって価値が変動します。その際、今日買った株を1か月後に売ることによって、利益や損益を確定することが可能になります。

一方、電力の場合は今日買った電力を1か月後に売ることができません。なぜなら、電力は貯蓄することが難しく、生成された瞬間に消費される必要があるからです。

電力市場には、こういった「同時同量の法則」という原理があります。つまり、発電した電力はすぐに消費される必要があるのです。

そのため、電力市場では決められた時間に発電する設備があり、さらにその電力を(同時間帯に)消費する人がいるという2つの条件がそろわないと取引が成立しません。

このような条件のもと、卸電力取引市場(発電事業者と小売電気事業者間の電力取引市場)では、1日につき30分刻みの電力が事業者間で取引されております。ただし、株式市場とは異なり発電電力をすぐに取引することはできないので、翌日発電して翌日受け渡す電力を前日の決められた時間に売買します。

TLG GROUP編集部:電力市場と金融市場の違いについて理解できました。では、金融デリバティブと電力デリバティブの価格設定にはどのような違いがあるのでしょうか?

山田教授:金融デリバティブの価格付けには、ある前提条件があります。それが「アービトラージを利用することができない(すなわち裁定利益と呼ばれるノーリスク・ノーコストで利益を得る機会(裁定機会)が存在しない)」ということです。

例えば、ある株式(原資産と呼びます)に対するデリバティブの価格が(理論価格から計算される適正価格と比べて)割高である場合、デリバティブを売却するのと同時に原資産となる株式と無リスク資産(国債などのリスクのない資産)のポートフォリオを購入したとします。

この時、理論的には、購入したポートフォリオとデリバティブは将来的には同じ価格になるので、将来反対売買をすることで裁定利益を得ることができてしまいます。

このように、同一の価値を持つ商品の一時的な価格差を利用して、利益を作り出す取引を裁定取引、そのような機会を裁定機会と言います。

あくまで理論的な仮定の下での話ではありますが、デリバティブが割高な価格になると、誰もがリスクなしで利益を得られるようになってしまいます。

一方、仮に市場に裁定機会があったとしても、裁定機会を利用して投資を行う投資家(アービトラージャー)の取引(裁定取引)によって、このような価格差は次第になくなるようになります。そのため、金融デリバティブにおいては、最初から裁定機会が存在しないことを前提として適正価格を求めるのです。

一方、電力市場では裁定機会を利用した取引はできません。なぜなら、電力は将来割高になることが分かっていても、安いときに買って高くなったときに売ることができないからです。電力デリバティブにおいても同様です。

そのため、電力デリバティブの価格付けは一般の金融デリバティブの価格付けと比べて一段難しい問題設定になります。しかし、電力デリバティブは保険的な側面を持っているため、保険の価格付けと同じように「保険会社の引き受けるリスクにどの程度の対価を支払うか」という考え方を適用することはできます。

例えば、我々が自動車保険を買う時には、万が一事故が起こった時の平均的な受取額に加えて、保険会社の方の手数料や引き受けるリスクに対するプレミアム(リスクプレミアム)を加味した額を支払っていますよね。

それと同様に、電力デリバティブは過去の電力価格のデータから将来の電力価格を推定して、その平均的な支払額を予測し、そこにリスクプレミアムを加味することでオプション価値を求めることができると考えられます。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。その場合、電力デリバティブの価格やリスクプレミアムに影響を与えるものとして、どういったものが挙げられるのでしょうか?

山田教授:電力デリバティブの価格決定において非常に重要な要素となるのが、電力価格のボラティリティ、つまり価格変動の激しさです。

先ほど、デリバティブには保険的な側面があるとお話ししましたが、保険とデリバティブは異なります。

保険は、想定される事象が生じた際の損失に応じて支払額が決まる商品ですが、デリバティブは損失ではなく原資産があらかじめ決められた価格(行使価格)を上回ったり下回ったりする場合に支払いが発生します。

電力デリバティブの場合、原資産に該当するのは電力価格ですので、この電力価格の変動が大きくなればなるほど支払額も大きく変動し、保険会社が引き受けるべきリスクも大きくなるのです。

TLG GROUP編集部:電力デリバティブにおける電力価格とは、一体どういったものなのでしょうか?

山田教授:この場合、電力デリバティブにおける電力価格とは、先ほど説明した、卸電力市場で取引されている電力の価格のことを指すようになります。

先に説明した通り、発電事業者と小売電気事業者が取引する電力価格は、30分単位で変動します。この30分単位の価格は前日のうちに値付けされており、この変動が電力デリバティブに影響するのです。

TLG GROUP編集部:我々、一般消費者が支払う電力価格とは異なるのですね。

山田教授:はい。一般消費者(エンドユーザー)が支払う電力価格は「小売価格」と呼ばれ、長期的な契約などによって一定期間固定されています。そのため、小売価格は価格変動リスクがそこまで大きくありません。

もちろん、長期的に見ると小売価格も毎月少しずつ変動していますが、卸電力市場では30分単位での価格変動があります。

価格変動リスクを負っているのは小売電気事業者と考えることができます。これらの事業者は卸電力市場で電力を購入し、その電力をエンドユーザーに販売する形で事業を行っています。

このように、電力価格の変動リスクを大きく負っている小売電気事業者は、損失リスクを回避するために電力デリバティブを活用することができます。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。電力デリバティブには電力価格のボラティリティが大きく関わっているというお話でしたが、電力価格は何によって決められるのでしょうか?

山田教授:電力価格に影響を与える要因はいくつかありますが、最も大きな影響を与えるのは季節や時間帯、気温などによる電力需要の変動です。

例えば、夏場の暑い時期や冬場の寒い時期には、空調の使用が増え、それに伴って電力需要が高まります。この場合、電力価格は高騰する傾向にあるのです。

また、近年は再生可能エネルギーの発電量も電力価格に影響を与えています。特に、太陽光発電や風力発電は天候や時間帯によって発電量が大きく変わるため、電力価格に大きく影響するのです。

さらに、最近では国際的に不安定な状況もあり、火力発電のために必要なエネルギーの輸入価格が高騰し、卸電力市場での取引価格も上昇傾向にあります。

TLG GROUP編集部:再生可能エネルギーの発電量が電力価格に影響を与えている例として、どのようなものが挙げられるのでしょうか?

山田教授:太陽光発電の場合、日射量が多い昼間は発電量が多くなるので、昼間の電力価格は下がる傾向にあります。

一方、冬場は日射量が少ないにも関わらず、電力需要は非常に高くなります。この時、太陽光発電による発電量はごくわずかなので、必然的に電力価格が高騰してしまうのです。

また、再生可能エネルギーは発電できることが保証できません。天気が曇りや雨であれば発電量は著しく減少してしまい、急な電力不足も起こり得るのです。

このように、再生可能エネルギーは将来の発電量を事前に保証することができないという不確実性を持っています。再生可能エネルギーの導入によって発電コストが低下する一方、予測誤差による損失リスクも大きくなる点には注意しなければなりません。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。続いて、再生可能エネルギーの導入が電力市場のヘッジ問題とどのように関連しているのかについて詳しく教えていただけますか?

山田教授:もともと電力市場には、需要と供給の変動に応じたヘッジ問題が存在していました。これは再生可能エネルギー導入前からの問題です。

ただ、数年前までの電力市場は、電力会社一社で発電から送電まで賄っていたので、このような需要と供給の変動による損失リスクは顕在化していませんでした。ところが、2016年の電力市場完全自由化によって、電力会社は発電、小売、送配電部門に分かれ、このうち送配電部門だけが中立的な立場となり、発電と小売は完全に分離されました。

そのことによって、先に述べたような小売電気事業者が需要と供給のリスクの多くを負うことになったのですが、昨今は、再生可能エネルギーの大量導入と制度改正により、発電事業者が負う供給量の変動リスクも大きくなりつつあります。

TLG GROUP編集部:電力市場では価格リスクが常に付きまとっているのですね。

山田教授:そうですね。それに加えて、どのように電力を消費するのかという量のリスクも潜在的に存在します。

先ほどもお話したように、電力価格は季節性や温度によって変動します。この価格変動によって電力の調達コストが変動するリスクを負う小売電気事業者は、このリスクを何とかして避けたい、つまりヘッジしたいと考えるのですが、さらに需要も季節性や温度によって変動するので、実際のところ、量の変動リスクも存在します。

特に、再生可能エネルギーは、供給側から見た「量のリスク」に大きく関わっています。

どのように電力を消費するのかという量のリスクは、あくまで電力を使用する側のものでした。しかし、再生可能エネルギーが導入されることによって、発電側にも量のリスクが生じるようになったのです。

再生可能エネルギーは天候によって発電量が左右されるため、予測をして取引可能量を決める必要があるのですが、予測値と実際の日射量との間に予測誤差が存在する場合は、市場への供給が不安定になってしまいます。

私は、そういった再生可能エネルギーの予測誤差リスクに伴う損失を補填するために、天候デリバティブや、再生可能エネルギー用にカスタマイズした気象予測誤差のデリバティブに関する研究を長い間続けております。

TLG GROUP編集部:ありがとうございます。デリバティブを用いたヘッジ手法は、今後さらに注目されそうですね。

社会人大学院の「経営学学位プログラム」とは

TLG GROUP編集部:筑波大学東京キャンパス社会人大学院には「経営学学位プログラム」というものがあると伺いましたが、具体的にはどのようなプログラムなのでしょうか?

山田教授:筑波大学では2020年4月に大学院の組織改編が行われました。これにより、(一部を除き)大学全体で学位プログラム化が実施されました。

学位プログラム化以前は研究科単位で修士課程、博士課程のカリキュラムが設定されていましたが、改変後はそれらを統一的な枠組みの中で体系的に設計することを目指した上で、より柔軟な学位取得の道が整備されました。

TLG GROUP編集部:なるほど。学位プログラム化が実施されるにあたって、どのような変更があったのでしょうか?

山田教授:大きな変更としては、従来の研究科や専攻という枠組みから、学位取得を目的としたプログラム(学位プログラム)を中心とする枠組みへとシフトしたことです。

例えば、「○○専攻」という呼び方だと、学生さんから見て何を習得できるか分かりにくい側面もあるのですが、「○○学位プログラム」という呼び方をすると、「あぁ、○○の学位が取得できるんだ」とすぐに理解できる、と言うと分かりやすいでしょう。

経営学位プログラムの前身である経営システム科学専攻の社会人が学びやすい環境や特色ある教育・研究体制は、現在でも経営学学位プログラムに引き継がれていますよ。

TLG GROUP編集部:筑波大学大学院は「社会人のリカレント教育を夜間開講で」というコンセプトを持つ、社会人のための夜間大学院としても知られていますよね。

社会人の方が経営学学位プログラムで学ばれるメリットとしては、どういったものがあるのでしょうか?

山田教授:大きなメリットとしては、学生が自分のキャリア生成や実務の課題解決に即した教育を受けられる点です。

特に、経営学学位プログラムでは、経営現場で直面する問題に対して学術的なアプローチから解決策を導出する力を身に着けることができます。

経営学学位プログラムでは、経営戦略、マーケティング、会計、ファイナンスなど、経営に必要な幅広い分野をカバーしています。これらの科目を通じて理論だけでなく、実務に応用するためのスキルも磨くことが可能です。

TLG GROUP編集部:とても充実した内容となっているのですね。プログラムに参加する社会人へのサポート体制はどうなっているのでしょうか?

山田教授:本学位プログラムに所属する学生は、基本的にみなさん有職社会人です。理系から文系、ベンチャー企業の経営者から大学教員、医師や官公庁勤めの方まで、非常に多彩なバックグラウンドを持っています。

経営学学位プログラムでは、このようなバックグラウンドの違いに配慮し、基礎科目で一定の知識を学習してから専門科目を履修するカリキュラムを構成しています。

さらに、1名の学生に3人の教員が指導にあたり、複数の分野にまたがったテーマでも研究ができる環境を整えています。本学位プログラムに所属している学生は企業の抱える実務課題を研究テーマとしていることも多いので、多角的な視点で研究を進められるようにサポートしているのです。

TLG GROUP編集部:社会人大学院ならではのサポート体制が整っているのですね。最後になりますが、金融工学に関心がある方に向けてメッセージをいただけますでしょうか?

山田教授:金融工学とは、資産価値評価や資産運用に伴うリスクを計量化し、管理するためのツールです。すでに実務で使用されているモデルにおいても、その背後では確率理論や高度な最適化手法が広く用いられています。

また、最近は機械学習や人工知能手法の適用も盛んです。私の研究室では、このような金融モデルを正しく取り扱うために必要な理論の基礎を学ぶとともに、実務で生じる課題に対し解を提示することを念頭に研究・教育に取り組んでいるので、是非一緒に挑戦していただけたら嬉しいです。

まとめ

TLG GROUP編集部:本日はお時間をいただき、ありがとうございました。山田教授にインタビューして、下記のことが分かりました。

独自インタビューで分かったこと
  • 金融工学とは、数理モデルや統計手法などを用いて金融市場の動きを分析し、リスクマネジメントに役立たせる学問である。
  • デリバティブは、市場の不確実性の中でリスクを管理し、投資機会を最大化するのに寄与するものである。
  • 電力市場には電力需要の変動によるリスクがあり、電力デリバティブや天候デリバティブなどを利用したリスク管理が重要である。
  • 再生可能エネルギーは天候による発電量の変動が大きいという不確実性があり、デリバティブを活用したリスクヘッジ戦略が求められる。
  • 筑波大学では社会人向けの経営学学位プログラムがあり、経営現場で直面する問題への学術的アプローチから解決策を導出する力を身に着けることができる。

金融工学は、リスク管理やポートフォリオの最適化において重要な役割を果たしている学問です。特に、デリバティブは投資家がリスクをヘッジしながら利益を得る機会を追求するための重要なツールであることが分かりました。

また、電力市場においてもデリバティブはリスク管理に役立つものであることが期待されます。現在、再生可能エネルギーの不確実性が課題となっている中で、山田教授の研究は今後も注目が集まりそうです。

取材・文:TLG GROUP編集部
記事公開日:2024年6月8日